このページの本文へスキップ
宮崎県立視覚障害者センター

総目次お問合わせ

新着情報

【センターより】編集後記

編集後記  重永麻衣
 今年の音訳養成講座で使った資料に、新美南吉の『でんでんむしのかなしみ』がありました。天皇陛下のご退位で新しい元号が発表される時期で、講師の先生が「皇后美智子さまが大切になさっているお話なので選んでみたのよ」とおっしゃいましたが、“ほぼ平成時代”で生きてきた私は、この作品の存在も、美智子さまの思い出深い話だということも、このとき初めて知りました。
 一匹のでんでんむしが、ある日、自分の背中の殻に悲しみがいっぱいつまっていることに気づきます。「もう生きていられません」と、他のでんでんむしに相談しますが、どのでんでんむしも「自分の殻も悲しみでいっぱいだ」と返します。そこで初めて「悲しみは誰でも持っているものだ。わたしばかりではないのだ。」と気づく物語です。
 短い児童文学ですが、言葉のひとつひとつが私の心の中にスっと入っていくようで、当たり前のようで見えていなかったものに自然と気づけた瞬間でした。
 美智子さまが「読書は、人生の全てが、決して単純でないことを教えてくれました。」とお話されたように、小さい頃読んだ作品が、大人になってから思いがけないところで心の支えになることがあるのです。
 ちなみに新美南吉は「ごんぎつね」や「手袋を買いに」を書いた昭和初期の作家です。私は小さい頃に読んだ「ごんぎつね」がとても可愛そうでトラウマになっているのですが・・・大人になった今読めば、また違う視点でとらえることができるかもしれませんね。

▲ページの先頭にもどる